コラム

冬を快適に過ごすには 〜漢方の古典「黄帝内経」より〜 2021/12/25


 黄帝内経による冬の過ごし方
原文

冬三月此謂閉蔵。水氷地圻。無擾乎陽。早臥晩起。必待日光。使志若伏若匿若有私意若己有得。
去寒就温。無泄皮膚使気亟奪。此冬気之応。養蔵之道也。逆之則傷腎。春為痿厥。奉生者少。

訓読

 冬三月これを閉蔵ヘイゾウと謂う。水こおり地にく。陽にわづらわされることなし。ソウに臥しワンに起き必ず日光を待つ。志をしてするが若く、かくれるが若く、私意あるが若く、己に得るところあるが若くならしむ。
 寒を去り温に就き、皮膚をセイして気を亟奪キョクダツせしむることなかれ。これ冬気の応、蔵を養うの道なり。これに逆らうときは則ち腎を傷り春痿厥を為す。生を奉くる者少し。

通解

冬になると、草木が枯れ落ち、穀物は蔵の中にしまい込まれ、昆虫や動物は土に潜り冬をしのぎます。
全てが閉じこもる特徴から、冬の時期を漢方の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」では「閉蔵」と言い表します。
この「閉蔵」は冬の3ヶ月の期間を指し、全てが閉じられ陽気(エネルギー)を外に出さない季節です。

●黄帝内経による冬の過ごし方
1、日の出と日没に合わせ、夜は早く寝て、朝はゆっくりと起きましょう。
1、冬は積極的に外に向かうようなことはせず、体をいたわり過ごしましょう。
1、体内エネルギーを逃がさないように、身体を冷やさないように温めましょう。

これらが冬の過ごし方に最適であり、気を整え、人が本来持つ力で健康を促すとされています。
また、これらを怠ると寒さに影響されやすい腎臓や膀胱系に影響を与えかねません。
冷えによってトイレの回数が増えたりするのは、冷えのせいだと多くの方が実感したことがあるのではないでしょうか。
漢方では、冬に"腎"への悪影響があると骨や腰にも負担がかかると考えられており、腎の働きが衰えるこの季節には手足、腰、膝、肩などのトラブルが起きやすくなると言われています。
人間の体温は1℃変化するだけで、大幅な免疫力の改善が見込めると言われています。
来たる春に向けて、のんびりゆったり暖かく過ごし身体を休めることが大切です。


 「腎気」をおぎない、冬も元気に過ごす

1、腎を養う

 腎気とは、「腎」のエネルギーを意味します。この場合の「腎」とは解剖学的な腎臓を意味するわけではありません。東洋医学では、エネルギーの源と考えられ、車に例えるとエンジンを回す際のバッテリーのような機能とされています。腎は、生命力や活力の源であり、成長・発育・生殖などに関わる重要な役目を果たしています。

そんな「腎」の働きを強化するのにおすすめなのが「黒食材」。
黒豆、黒ゴマ、黒キクラゲ、海藻類、黒酢、黒砂糖、ブドウなどの「黒食材」には、生命力や気力を養い、若々しさを保つ大きなパワーがあるのです。 黒豆は「腎」を養うとともに、身体を温めて血行を促進し、美白にも役立ちます。ブドウは血を補う効果も高く、顔色の悪さを改善する働きも。レーズンなら手軽に取り入れられます。

2、辛味をとるー身体を温め血流をよくする

ネギ・ニンニク・しょうがなどの薬味と呼ばれる食材は、文字通り「薬」味。
薬味には免疫力を高める作用があります。疲労回復や血行促進、殺菌、解毒の効能もあり、食材の傷みを遅らせ、食あたりを防ぐことも助けてくれます。

3、鹹味をとる

鹹味(かんみ)とは、塩辛い味のことです。
塩辛いものは、体に悪いんじゃないの?と思われがちですが、人にとって欠かせない味の一つです。

鹹味は腎気をおぎないます。しこりやかたまりを柔らかくする作用や尿や便などの排泄をうながす作用などがあり、肥満や便秘解消などの古くから用いられてきました。単に塩や味噌、醤油などを舐めた時のしょっぱいと感じる塩辛さだけではなく、昆布や魚などの海産物にも鹹味に当てはまります。

過不足なく、バランスよく上手に摂ることで体の代謝を調節してアンチエイジングにも効果があります。


 冬に効くツボ
浮腫みのツボ
湧泉

足の指を全て曲げた時に一番凹む場所

復溜

アキレス腱の際に沿って、内くるぶしの一番高いところから指3本分上

三陰交

くるぶしの一番高いところから指4本分上。骨を押すように。

陰陵泉

すねの内側の骨際を指で上になぞっていき、指が止まるところ


冷えのツボ
湧泉

足の指を全て曲げた時に一番凹む場所

太渓

足首の内側、内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ

太衝

足の甲側、足の親指と人差し指の間の付け根にあるくぼみ

三陰交

くるぶしの一番高いところから指4本分上。骨を押すように。

食べ過ぎ
足三里

膝のお皿の下から指4本下の位置より少し外側

風邪予防
風池

髪の生え際、首筋のやや外側のくぼみ

喉の痛み
天突

左右の鎖骨を結んだ中央のくぼみ

魚際

親指の付け根から手首までのふくらみの真ん中、手のひらと手の甲の境目


免疫改善
足三里

膝のお皿の下から指4本下の位置より少し外側


発毛
百会

頭頂部、左右の耳の一番上から真っ直ぐ上に伸ばした線の真ん中

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